2024/04/16
黒猫ミステリー賞 第2回受賞作 発表
Black Puzzle
受賞者
小寺 無人(こでら なきと)
埼玉県生まれ。東京都在住。クリームソーダと散歩、それに音楽が好き。
受賞コメント
物心ついた時から人を楽しませることが好きでした。
もしも大人になったら、人に楽しんでもらえる仕事がしたい。そう思い続けているうちに、いつの間にか『大人』になっていました。何も成しえないまま、普通の社会人に。
コレじゃだめだ、己を変えよう! そう一念発起し、少年時代の夢だった小説家を目指し始めました。文字を紡ぐたびに、「これは本当に面白いのか」という問いを常に自分に投げかけ続けながら。
漠然とした不安が、いつも付きまとっていたと思います。
そんな時、大切な人たちが『小寺の書いた小説は面白いよ』と背中を押してくれました。
――受賞の報せが届いた時、ようやく「本当に面白いものが書けていたのだ!」という安堵で胸がいっぱいになりました。自分が「面白い!」と思うものをぶち込みながら書いたものが、ちゃんと誰かに届いた。そのことが無性に嬉しかったです。
改めて、第2回黒猫ミステリー賞受賞作に選んでいただきありがとうございます。選考に携わっていただいたすべての皆様に感謝を申し上げます。そして願わくは、この小説をできるだけたくさんの読者様が楽しんでくださいますように。
作品概要
古文書オタクの黒木鉄生(30歳)は、大学時代の親友・八重垣志紀(旧姓・水森)に頼まれ、村で発見された「沼神文書」と呼ばれる古文書を解読するために巨人伝説が残る農村を訪れた。村に到着したその夜、セイタカ様と呼ばれる巨大な地蔵の前で、市議会議員の息子・島田光男が殺害された。さらに2日後には、こしかけ山と呼ばれる場所で八重垣の義妹・咲良(女子高生)の幼馴染である鈴本健三郎が首を吊った状態で見つかる。「沼神文書」の解読作業を進める黒木は、村と村人の秘密、2人の死の真相に迫ることになり……。
殺人事件の謎と、巨人伝説の残る農村の秘密に迫る、民俗学系ミステリー。
総評および受賞者講評
第2回黒猫ミステリー賞へのご応募をいただいた皆様、ありがとうございました。この度の応募総数は274作品。幅広い作風のものが寄せられました。文章、展開ともにこなれていて、個性的な作品も多かったと感じています。読み応えのある作品が多数あった中、第2回黒猫ミステリー賞受賞作は「Black Puzzle」(小寺無人)となりました。本作は「とある農村」の秘密の解明と、そこで起きる殺人事件の解決とを主軸に展開されていく、民俗学系ミステリー小説です。設定のダイナミックさやモチーフの扱い方、キャラクター造形の巧みさ、テンポの良さは素晴らしく、終わり方はきわめて爽やか。一筋の薫風が吹き抜けたような印象が残る作品でした。第一次選考のときから選考委員の間で話題になった1作です。一番の読みどころである村と有力一族の秘密、その解明に至る方法・構成が、不完全燃焼なのが非常に惜しい。今後はより効果的な展開となるよう加筆修正を検討し、今秋刊行での単行本化を目指します。